「届」を甘く見てはいけない
― 出し忘れが、許可そのものを失わせます
「決算変更届って、出さなくても誰も何も言ってこないよね」。実際、そういうお話をよく伺います。たしかに、出さなかった翌日に役所から電話が来ることはまずありません。
けれども、建設業法は届出をしないこと自体を罰則の対象にしています。そして本当に困るのは、5年後の更新のとき、あるいは元請から経審の結果を求められたときに、まとめて跳ね返ってくることです。
この記事の結論(お急ぎの方へ)
- 決算変更届の期限は事業年度終了後4か月以内(建設業法第11条第2項)。毎年、必ずです。
- 届出をしないと、建設業法第50条により6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になり得ます。
- あわせて指示処分・営業停止処分(同法第28条)の対象にもなり得ます。
- 建設業法違反で罰金刑を受けると欠格要件に該当し、許可の取消しにつながります。
- 未提出のままでは更新申請が進まず、経審も受けられず、公共工事の入札にも参加できません。
- 期限を過ぎても提出はできます。気づいた時点ですぐ出すのが最善手です。
「うちは何年分たまっているんだろう?」
まずは現状を一緒に確認しましょう。何年分たまっていても、順番に片付ければ必ず正常な状態に戻せます。相談だけでも構いません。
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※ 営業目的のお電話はお断りしております。
そもそも「届」とは何か
建設業許可の世界で「届」と呼ばれるものは、大きく3つあります。許可を取ったあとに必要になる手続きです。
① 決算変更届(変更届出書(決算報告))
毎事業年度が終わるたびに、その1年間の工事実績と決算内容を県に報告するものです。工事の実績がゼロでも、提出義務はなくなりません。「なし」と記載して出します。
② 各種変更届
商号・営業所・資本金・役員・経営業務の管理責任者・営業所技術者(専任技術者)などが変わったときに出すものです。種類によって期限がバラバラで、ここが一番の落とし穴です。
③ 廃業届
許可業種の一部をやめたとき、事業をやめたときなどに出すものです。出さずに放置すると、これも届出義務違反です。
期限の一覧 ― 「30日」と「2週間」を混同しない
実務でご相談を受けていて、最も多い勘違いが「変更届は全部30日以内だと思っていた」というものです。経営業務の管理責任者と営業所技術者だけは2週間以内で、期限が半分以下です。
| 届出の種類 | 提出期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 決算変更届(決算報告) | 事業年度終了後4か月以内 | 法第11条第2項 |
| 商号・営業所・資本金・役員等の変更 | 変更後30日以内 | 法第11条第1項 |
| 使用人数・定款・令3条使用人一覧表の変更 | 事業年度終了後4か月以内 | 法第11条第3項 |
| 経営業務の管理責任者等・営業所技術者等の変更 | 変更後2週間以内 | 法第11条第4項 |
| 上記の要件を欠くに至ったとき/欠格要件に該当したとき | 2週間以内 | 法第11条第5項 |
| 廃業(全部・一部) | 30日以内 | 法第12条 |
届を出さないと、実際に何が起きるのか
ここからが本題です。「出さなくても何も起きない」という体感と、法律上の建前とのあいだには、想像以上に大きな落差があります。
リスク1|刑事罰の対象になる(6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)
建設業法第50条は、第11条第1項から第4項までの書類を提出しなかった者、および虚偽の記載をして提出した者を、6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処すると定めています。決算変更届は第11条第2項ですから、まさにこの対象です。
「うっかり忘れた」も、条文上は同じ土俵に立ちます。ここを軽く見ないでいただきたい、というのがこの記事の主旨です。
リスク2|指示処分・営業停止処分の対象になる
建設業法第28条は、建設業者が法律に違反した場合の指示処分および営業停止処分を定めています。届出義務違反は、その対象になり得ます。神奈川県の申請の手引きにも、届出をしなかったとき、または届出書類に虚偽・不正があった場合には第28条および第50条の適用があり得ると、はっきり書かれています。
営業停止は、公表されます。地元で仕事をしている事業者にとって、これは金額に換算できない打撃です。
リスク3|罰金刑を受けると、許可そのものが取り消される
ここが最も見落とされている点です。建設業法違反により罰金の刑に処せられると、それ自体が欠格要件に該当します。欠格要件に該当すれば、許可は取消しです。しかも一定期間、再取得もできません。
「届を1枚出さなかった」ことが、理屈のうえでは「許可を失う」ところまで一本の線でつながっている。この構造をご存じない方が、本当に多いのです。
リスク4|更新申請が進まない
これは実害として一番よく起きます。5年に一度の更新申請のとき、過去の決算変更届が未提出だと、まずその未提出年分をすべて出すよう求められます。5年分たまっていれば5期分です。
更新には期限があります。書類集めに追われて期限に間に合わなければ、許可は失効します。失効すれば、あらためて新規申請です。費用も時間も、比べものにならないほど増えます。
リスク5|経審が受けられず、公共工事の入札に参加できない
経営事項審査(経審)は、決算変更届が提出されていることが前提です。決算変更届が出ていなければ、経審は受けられません。経審が受けられなければ、入札参加資格の申請もできません。
「元請から公共工事の話をもらったので、急いで経審を受けたい」──こういうご相談をいただいたとき、決算変更届が3期分たまっていて間に合わない、というのは、残念ながら珍しい話ではありません。チャンスは、待ってくれません。
リスク6|届出書類は「誰でも閲覧できる」
建設業許可の申請書・届出書の一部は、閲覧の対象です。取引先も、元請も、金融機関も、見ようと思えば見られます。決算変更届が何年も出ていない会社は、その事実がそのまま外から見えている、ということです。
元公務員として発注者側にいた立場から申し上げると、審査する側は「きちんと出している会社かどうか」を必ず見ています。届出は、単なる事務ではなく、信用そのものです。
何年分たまっていても、必ず片付きます
「今さら相談したら怒られるのでは」と思う必要はまったくありません。当事務所には、5期分まとめてというご相談も届きます。まずは現状を見せてください。
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よくある5つの誤解
誤解1「税理士さんに作ってもらった決算書をそのまま出せばいい」
出せません。決算変更届に添付する財務諸表は、建設業法の様式に組み替える必要があります。売上高は「完成工事高」、売上原価は「完成工事原価」、売掛金は「完成工事未収入金」というように、勘定科目そのものが建設業仕様に変わります。ここが自分でやろうとして最初につまずくところです。
誤解2「工事の実績がなかった年は出さなくていい」
出します。工事経歴書に「なし」と記載して提出します。実績がないことも報告事項です。
誤解3「期限を過ぎたら、もう受け付けてもらえない」
そんなことはありません。期限を過ぎても提出はできます。放置している時間が長いほど不利になるだけです。気づいた今日が、一番早い日です。
誤解4「納税証明書は法人税のものでいい」
知事許可の場合、添付するのは事業税の納税証明書です。法人の場合は法人事業税、個人の場合は個人事業税で、取得先は税務署ではなく県(総合支庁の税務担当)です。ここを間違えて取り直しになる方が多くいらっしゃいます。
誤解5「役員が変わったけど、次の決算のときにまとめて出せばいい」
出せません。役員等の変更は30日以内、経営業務の管理責任者・営業所技術者の変更は2週間以内です。まとめてよいのは、あくまで決算に関する事項だけです。
もう何年もたまっている場合は、どうすればいいか
結論から申し上げます。古い年度から順番に、1期ずつ作って出す。これだけです。裏技はありません。ただ、順番と段取りを間違えなければ、思っているより早く終わります。
- 許可通知書と、直近の副本を探す。 前回どこまで出したかは、副本を見れば分かります。
- 未提出の期を特定する。 分からなければ、県に確認すれば教えてもらえます。
- 各期の決算書(貸借対照表・損益計算書)を揃える。 税理士事務所に依頼すれば控えがあります。
- 各期の工事実績を洗い出す。 請求書・注文書・通帳の入金記録から拾えます。
- 古い期から順に作成し、まとめて提出する。 納税証明書は期ごとに必要です。
当事務所にご依頼いただいた場合
当事務所は建設業許可を専門としています。代表の井苅は、工事の発注者側で約30年勤めた元公務員です。審査する側が何を見ているかを、内側から知っています。だからこそ、「書類を出す」ではなく「一発で通る形で出す」ことにこだわっています。
許可の維持・公共工事に関する報酬
各種変更届・廃業届の報酬
- 決算書からの建設業法様式への組替えは当事務所が行います。税理士事務所の決算書をそのままお預けください。
- 納税証明書などの証明書取得も代行可能です(実費別途)。
- 複数期分まとめてのご依頼にも対応します。
- 営業所技術者等が退職したものの後任が決まっていない、要件を満たすか分からないという段階でもご相談いただけます。
- 次年度以降の提出時期を当事務所側で管理し、事前にご案内します。出し忘れの再発を防ぎます。
よくあるご質問
Q. 決算変更届を出し忘れました。すぐに罰則を受けますか。
A. 期限を過ぎたからといって、直ちに罰則が科されるわけではありません。ただし建設業法第50条の対象行為であることに変わりはなく、長期にわたる放置は監督処分の対象にもなり得ます。気づいた時点で速やかに提出してください。
Q. 何年分もたまっていますが、依頼できますか。
A. できます。古い期から順に作成し、まとめて提出します。決算書と工事実績が分かる資料をご用意いただければ、あとは当事務所で進めます。
Q. 工事の実績がゼロの年も提出が必要ですか。
A. 必要です。工事経歴書に「なし」と記載して提出します。実績がないことも報告事項です。
Q. 「常勤役員等」と「経営業務の管理責任者」は違うものですか。
A. 同じものです。法改正により、これまで「経営業務の管理責任者(経管)」と呼ばれていた立場が「常勤役員等」という名称になりました。同じく「専任技術者(専技)」は「営業所技術者等」になっています。どちらの呼び方でお話しいただいても構いません。
Q. 自分で作ることもできますか。
A. できます。ただし、財務諸表を建設業法の様式に組み替える作業に時間がかかる方が多いです。ご自身で作られる場合でも、期限だけは必ず守ってください。
Q. 山形県以外でも依頼できますか。
A. 東北6県(青森・岩手・秋田・宮城・山形・福島)、茨城・栃木・埼玉・千葉、新潟・長野、石川・富山に対応しています。申請先によって運用が異なりますので、個別にご確認のうえ対応いたします。
【出典】建設業法(第11条・第12条・第28条・第50条)/山形県「建設業許可の決算変更届の手引き」(令和8年4月)/山形県「建設業許可の手引き」(令和8年4月)/神奈川県「建設業許可申請の手引き」/岩手県「建設業許可申請の手引き」(令和7年12月改訂版)
※ 本記事は掲載時点の情報に基づいています。法令・様式・運用は改正される場合があり、また申請先によって取扱いが異なります。実際の手続きにあたっては、必ず申請先の最新の手引きをご確認いただくか、当事務所にご相談ください。
出し忘れは、今日から止められます
届を1枚出すか出さないかで、5年後の景色が変わります。難しい話ではありません。「うちは大丈夫だろうか」と少しでも思われたら、そのタイミングでご連絡ください。
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行政書士事務所みらい
- 代表
- 井苅 清実(行政書士/1級土木施工管理技士/宅地建物取引士/測量士補)
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